「あれ、何を取りに来たんだっけ?」「ほら、あの人……名前が出てこない」――60代になってから、こんな場面が明らかに増えました。最初は笑い話で済ませていましたが、80代の両親に認知症の兆候が出てきたこともあり、「自分もそうなるのでは」と不安を感じるようになりました。

この記事では、加齢によるもの忘れと認知症の違い、私が日常で実践している対処法を、難しい言葉を使わずにまとめました。

加齢によるもの忘れとは?

年齢を重ねると、脳の情報処理スピードが少しずつ遅くなります。これは筋力が落ちるのと同じで、誰にでも起こる自然な変化です。人の名前がすぐに出てこない、買い物に行ったのに何を買うか忘れる、部屋に入ったら目的を忘れる――こうした「ど忘れ」は、加齢による正常なもの忘れです。

脳の中で記憶を担当しているのは「海馬(かいば)」という部分ですが、海馬の機能は20代をピークに緩やかに低下していきます。つまり、もの忘れが増えること自体は異常ではありません。

📌 「ど忘れ」と「記憶障害」の大きな違い
加齢によるもの忘れは、ヒントをもらえば思い出せるのが特徴です。「ほら、先週一緒にお茶した人」と言われて「ああ、田中さんね!」と出てくるなら心配いりません。一方、そのこと自体をまるごと忘れている(お茶をしたこと自体を覚えていない)場合は、認知症の可能性があります。

もの忘れと認知症の違い

「もの忘れ」と「認知症」は似ているようで、実は大きく違います。以下の違いを知っておくだけでも、不安がかなり減ります。

加齢によるもの忘れ

認知症によるもの忘れ

私の両親の場合、最初のサインは「同じ話を何度も繰り返す」ことでした。以前は「さっき話したよ」と指摘すると気づいていましたが、次第に「そんなこと話していない」と本気で否定するようになりました。この変化に気づけたことで、早めに受診につなげることができました。

こんなサインは要注意

以下のような変化が見られたら、単なるもの忘れではなく認知症の初期症状かもしれません。ご本人だけでなく、ご家族が気づくことも多いです。

💡 「軽度認知障害(MCI)」という段階がある
正常なもの忘れと認知症の間に「軽度認知障害(MCI)」という段階があります。MCIの段階で適切な対策(運動・食事・脳の活性化など)を取ることで、認知症への進行を遅らせたり、正常な状態に戻る可能性もあると言われています。だからこそ「おかしいな」と感じたら、早めの受診が大切です。

私が実際に試してよかった工夫

① メモとリストを「仕組み化」する
「覚えておこう」を信用しないことにしました。買い物リストはスマホのメモアプリに入れる、薬は曜日ごとのケースに分ける、大事な予定はカレンダーアプリに入れてアラームをセットする。「忘れても大丈夫な仕組み」を作ることで、忘れること自体がストレスでなくなりました。

② 置き場所を「固定」する
鍵・財布・メガネなど、毎日使うものは置き場所を完全に固定しました。玄関に小さなトレイを置いて「帰ったら必ずここに置く」とルール化するだけで、「鍵どこだっけ?」がほぼゼロになりました。

③ 有酸素運動を習慣にする
ウォーキングを始めました。週に3〜4回、30分ほど歩くだけですが、脳への血流が増えることで記憶力の維持に効果があると言われています。実際に、運動を始めてから頭がスッキリする感覚があり、気分も前向きになりました。

📌 運動と脳の関係
有酸素運動は脳の海馬の萎縮を抑え、記憶力の低下を遅らせる効果があることが複数の研究で示されています。激しい運動は必要なく、ウォーキングや軽い体操でも十分です。大切なのは「継続すること」です。

④ 人との会話を意識的に増やす
会話は脳にとって最高のトレーニングです。相手の話を聞く、内容を理解する、適切な返事を考える――この一連の流れで脳の複数の領域が同時に活性化されます。退職後は会話の機会が減りがちですが、近所の人への挨拶、趣味のサークル、家族との電話など、意識的に人と話す時間を作るようにしています。

⑤ 新しいことに挑戦する
脳は「いつもと同じ」ことの繰り返しでは刺激が少なくなります。料理で新しいレシピに挑戦する、行ったことのない場所を散歩する、スマホの新しい使い方を覚える――小さなことでも「初めて」の体験が脳を活性化してくれます。

⑥ 質の良い睡眠を取る
睡眠中に脳は日中の記憶を整理・定着させます。また、最近の研究では睡眠中に脳内の老廃物(アミロイドβなど)が排出されることがわかっています。私は寝る前のスマホをやめて、部屋を暗くして寝る習慣をつけました。6〜7時間は確保するようにしています。

脳トレは本当に効果があるのか

パズルや計算ドリルなどの「脳トレ」は本当に効果があるのか――これはよく議論されるテーマです。

正直なところ、「脳トレだけで認知症を予防できる」という科学的な証拠は十分ではありません。ただし、脳を積極的に使う活動(パズル、ゲーム、読書、楽器演奏など)を習慣的に行っている人は、そうでない人に比べて認知機能の低下が緩やかだという研究結果は複数あります。

私自身は、脳トレを「効果がある」というより「脳を使う習慣を作るきっかけ」として捉えています。テレビをぼんやり見ている時間を、パズルや神経衰弱に置き換えるだけでも、脳への刺激はまったく違います。何より、ゲームは楽しいので続けやすいのが一番のメリットです。

💡 「楽しい」が脳には一番大事
義務感でやる脳トレはストレスになり、逆効果になることもあります。「ちょっと面白いな」「もう一回やりたいな」と思えるものを選ぶのがコツです。このサイトのゲームも、楽しみながら脳を使えるように作っています。

病院に行くべきタイミング

もの忘れが気になっても、「年のせいだろう」と放置しがちです。ただし、以下のような場合は早めに受診してください。

受診先は「もの忘れ外来」がある病院がベストです。なければ神経内科・精神科(老年精神科)・脳神経外科でも対応してくれます。かかりつけ医に相談して紹介してもらうのも良い方法です。

📌 受診のときのコツ
できればご家族と一緒に受診してください。本人は「困っていない」と感じていても、家族から見ると変化に気づいていることが多いです。日頃の様子をメモにまとめて持っていくと、医師も診断しやすくなります。

まとめ

加齢によるもの忘れは誰にでも起こる自然な現象で、必要以上に怖がることはありません。ただし、「以前と明らかに違う」と感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。

日常でできることは意外とシンプルです。メモで「忘れても大丈夫な仕組み」を作ること、運動と会話で脳に刺激を与えること、質の良い睡眠を取ること。この3つを意識するだけでも、もの忘れとの付き合い方はずいぶん変わります。

このサイトには脳のトレーニングになるゲームもあります。楽しみながら脳を使う習慣作りに、よかったら試してみてください。

8パズルを開く(タイルをスライドして完成形に揃える定番パズル)

神経衰弱を開く(カードをめくってペアを見つける記憶力トレーニング)

モグラ叩きを開く(反射神経と注意力のトレーニング)

筆者より
私自身も60代でもの忘れが増えてきたことを実感しており、80代の両親の認知症を身近で見ています。この記事の内容は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は、必ず専門医を受診してください。