「あれ、何を取りに来たんだっけ?」「ほら、あの人……名前が出てこない」――60代になってから、こんな場面が明らかに増えました。最初は笑い話で済ませていましたが、80代の両親に認知症の兆候が出てきたこともあり、「自分もそうなるのでは」と不安を感じるようになりました。
この記事では、加齢によるもの忘れと認知症の違い、私が日常で実践している対処法を、難しい言葉を使わずにまとめました。
加齢によるもの忘れとは?
年齢を重ねると、脳の情報処理スピードが少しずつ遅くなります。これは筋力が落ちるのと同じで、誰にでも起こる自然な変化です。人の名前がすぐに出てこない、買い物に行ったのに何を買うか忘れる、部屋に入ったら目的を忘れる――こうした「ど忘れ」は、加齢による正常なもの忘れです。
脳の中で記憶を担当しているのは「海馬(かいば)」という部分ですが、海馬の機能は20代をピークに緩やかに低下していきます。つまり、もの忘れが増えること自体は異常ではありません。
もの忘れと認知症の違い
「もの忘れ」と「認知症」は似ているようで、実は大きく違います。以下の違いを知っておくだけでも、不安がかなり減ります。
加齢によるもの忘れ
- 体験の「一部」を忘れる(昨日の夕食のメニューを忘れる)
- 忘れたことを自覚している(「何か忘れてる気がする」)
- ヒントがあれば思い出せる
- 日常生活に大きな支障はない
- 判断力は保たれている
認知症によるもの忘れ
- 体験「そのもの」を忘れる(昨日の夕食を食べたこと自体を忘れる)
- 忘れたことの自覚がない(「そんなこと言ってない」)
- ヒントをもらっても思い出せない
- 日常生活に支障が出てくる(同じ買い物を繰り返す、道に迷うなど)
- 判断力の低下がみられる
私の両親の場合、最初のサインは「同じ話を何度も繰り返す」ことでした。以前は「さっき話したよ」と指摘すると気づいていましたが、次第に「そんなこと話していない」と本気で否定するようになりました。この変化に気づけたことで、早めに受診につなげることができました。
こんなサインは要注意
以下のような変化が見られたら、単なるもの忘れではなく認知症の初期症状かもしれません。ご本人だけでなく、ご家族が気づくことも多いです。
- 同じことを何度も聞く・話す(数分前の会話を覚えていない)
- 日付や曜日がわからなくなる(「今日は何曜日?」が頻繁になる)
- 慣れた道で迷う(いつも通っている場所なのに帰れない)
- お金の管理ができなくなる(支払いを忘れる、同じものを何度も買う)
- 身だしなみに無頓着になる(以前は気にしていたのに気にしなくなった)
- 趣味や外出への意欲がなくなる(「面倒だから」が口癖になる)
- 怒りっぽくなった・性格が変わった(穏やかだった人が急にイライラする)
私が実際に試してよかった工夫
① メモとリストを「仕組み化」する
「覚えておこう」を信用しないことにしました。買い物リストはスマホのメモアプリに入れる、薬は曜日ごとのケースに分ける、大事な予定はカレンダーアプリに入れてアラームをセットする。「忘れても大丈夫な仕組み」を作ることで、忘れること自体がストレスでなくなりました。
② 置き場所を「固定」する
鍵・財布・メガネなど、毎日使うものは置き場所を完全に固定しました。玄関に小さなトレイを置いて「帰ったら必ずここに置く」とルール化するだけで、「鍵どこだっけ?」がほぼゼロになりました。
③ 有酸素運動を習慣にする
ウォーキングを始めました。週に3〜4回、30分ほど歩くだけですが、脳への血流が増えることで記憶力の維持に効果があると言われています。実際に、運動を始めてから頭がスッキリする感覚があり、気分も前向きになりました。
④ 人との会話を意識的に増やす
会話は脳にとって最高のトレーニングです。相手の話を聞く、内容を理解する、適切な返事を考える――この一連の流れで脳の複数の領域が同時に活性化されます。退職後は会話の機会が減りがちですが、近所の人への挨拶、趣味のサークル、家族との電話など、意識的に人と話す時間を作るようにしています。
⑤ 新しいことに挑戦する
脳は「いつもと同じ」ことの繰り返しでは刺激が少なくなります。料理で新しいレシピに挑戦する、行ったことのない場所を散歩する、スマホの新しい使い方を覚える――小さなことでも「初めて」の体験が脳を活性化してくれます。
⑥ 質の良い睡眠を取る
睡眠中に脳は日中の記憶を整理・定着させます。また、最近の研究では睡眠中に脳内の老廃物(アミロイドβなど)が排出されることがわかっています。私は寝る前のスマホをやめて、部屋を暗くして寝る習慣をつけました。6〜7時間は確保するようにしています。
脳トレは本当に効果があるのか
パズルや計算ドリルなどの「脳トレ」は本当に効果があるのか――これはよく議論されるテーマです。
正直なところ、「脳トレだけで認知症を予防できる」という科学的な証拠は十分ではありません。ただし、脳を積極的に使う活動(パズル、ゲーム、読書、楽器演奏など)を習慣的に行っている人は、そうでない人に比べて認知機能の低下が緩やかだという研究結果は複数あります。
私自身は、脳トレを「効果がある」というより「脳を使う習慣を作るきっかけ」として捉えています。テレビをぼんやり見ている時間を、パズルや神経衰弱に置き換えるだけでも、脳への刺激はまったく違います。何より、ゲームは楽しいので続けやすいのが一番のメリットです。
病院に行くべきタイミング
もの忘れが気になっても、「年のせいだろう」と放置しがちです。ただし、以下のような場合は早めに受診してください。
- 家族や周囲から「最近おかしい」と指摘された
- 同じことを繰り返し聞いていると言われる
- 日常の段取り(料理の手順、家電の操作など)がうまくいかなくなった
- 道に迷ったり、日付がわからなくなることがある
- もの忘れへの不安で気持ちが落ち込んでいる
受診先は「もの忘れ外来」がある病院がベストです。なければ神経内科・精神科(老年精神科)・脳神経外科でも対応してくれます。かかりつけ医に相談して紹介してもらうのも良い方法です。
まとめ
加齢によるもの忘れは誰にでも起こる自然な現象で、必要以上に怖がることはありません。ただし、「以前と明らかに違う」と感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。
日常でできることは意外とシンプルです。メモで「忘れても大丈夫な仕組み」を作ること、運動と会話で脳に刺激を与えること、質の良い睡眠を取ること。この3つを意識するだけでも、もの忘れとの付き合い方はずいぶん変わります。
このサイトには脳のトレーニングになるゲームもあります。楽しみながら脳を使う習慣作りに、よかったら試してみてください。
→ 8パズルを開く(タイルをスライドして完成形に揃える定番パズル)
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